フレグランス研修会
5月10日、フレグランス研究会の春の研修会が、蘭友会顧問の徳田勝彦氏を講師に迎え須和田農園で開催された。
ラン園のご厚意で、展示温室、販売温室、奥の多種属温室から好きな開花株を持ち出し、研修用に使わせていただいた。研修用の開花株は、会場が須和田農園であれば当然カトレヤ主体になるかと思いきや、参加者が選択した14株のうちカトレヤは3株、その他は多彩な花を持ち込んでの研修になり、体験した花の香りは例会で行っているフレグランス審査に比べてかなり多様なものとなった(例会ではカトレヤが多い)。
販売温室内のたくさんの花の中から審査用の花を選ぶ
香りを楽しみながらその印象を言葉にする
研修では研修参加者が選んだ14種の花の香りを嗅ぎながら、いつも例会でやっているように審査用紙に評価を書き込んで順位付けする方法で審査の研修を行ったが、今回は、1月の松坂屋蘭展でやったように花の香りを、できるだけ自分のことばで表現することも練習した。
研 修 風 景
この研修の目的は、きわめて個人的な感性に委ねられる要素が多い香りの評価を、いかに多くの人たちに共通の評価要素をもって客観評価するかを学習することにあり、自分が感じている香りのイメージを以下に示すような客観的な要素について点数評価し、それらを集計した結果と自分自身の評価とを見比べながら講師の徳田先生より香りの専門的立場からの指導を受けるようにして研修する。以下に示す評価基準は、研修に使われる香りの審査の点数評価基準であるが、東京ドームなどの蘭展で行われる香りの審査でもこれと同様の基準が使用される。
香りの審査の評価基準
1.強さ+拡散性(香りの広がりの良さ):4点満点
2.上品さ:5点満点
3.華やかさ:5点満点
4.新鮮さ:3点満点
以上4項目を点数評価して加算し、合計点で順位決定する。
花の香りを言葉で表すことについて、徳田先生からは「できるだけ身近な花の香りや、生活の中で多くの人が共通に感じられる香りに置き換えて言葉にするといい」という助言をいただき、ただ香りを嗅いで自分だけが納得して頷くだけでなく「この香りはヒヤシンス、この香りにはツツジのような香りが混じっている」などと、香りの印象を言葉にしながらご指導をいただいた。以下、研修の中で特徴的であった香りの印象と花の写真である。
Lc Casitas Spring X Blc Giant Pearl
強さ・拡散性:2.9
上品さ:3.0、
華やかさ:3.2
新鮮さ:1.8
投票で1位(評価点平均10.9)になったカトレヤである。花は傷んでいるが、ローズにツツジのような香りの要素を加えたバランスのとれた香りである。
Encyclia cordigera
強さ・拡散性:2.9
上品さ:2.7、
華やかさ:2.5
新鮮さ:1.7
講師の徳田先生ご推薦の第1位の花である(評価点平均9.9)。輪郭のはっきりしたヒヤシンス系のフレッシュな香りで、梅雨時のうっとうしい季節にはこういう香りがよろしい。
Coelogyne ochracea lemoniana(素芯の珍しい花)
強さ・拡散性:2.5
上品さ:2.8
華やかさ:2.5
新鮮さ:2.2
もう一つ、爽やかな香りの花である(評価点平均9.9)。ドライな樹木の香りで(ヒバやヒノキの心材を思わせる香り)、専門的にはウッディノートという。爽やかで落ち着く感じがする。
Epl.Little nagget'Mendenhall'
強さ・拡散性:2.3
上品さ:2.5
華やかさ:2.1
新鮮さ:1.6
これは、これまであまり体験したことのない香りの花である(評価点平均8.5)。マンゴーやパパイヤなどのトロピカルフルーツのようなスウィーティな香り。
Dendrobium ejirii
強さ・拡散性:2.2
上品さ:3.2
華やかさ:2.7
新鮮さ:1.7
これも、徳田先生おすすめの一品で、須和田の看板種の一つである(評価点平均9.8)。スミレ様の香りにブルガリア・ローズ(ローズ系の香料の原料)を思わせるような軽い甘みを伴ったロマンティックでフローラルな香り。
Bulb. Graveolens
審査結果一覧表
強さ・拡散性:3.3
上品さ:0.4
華やかさ:0.7
新鮮さ:0.4
これは、筆者推薦のおまけの株である。悪臭の参考にと思い、審査テーブルの真ん中に大きな鉢植えをデンっと置いたので、近くに置いてあったワルケリアナのセルレアもカトレヤ・トリアネーの名花もすべてクソまみれのすごい臭いになってしまった(専門的にはアニマルノートという・評価点平均:4.7)。途中から少し離れた場所に置いただが、横の方から犬の糞を踏んだ後の様な臭いが漂ってくるしまつで、スカトールの拡散性とパワーに脱帽であった。
スカトール・・・・糞臭の元になる化学物質で、研修に参加した人たちには不快な臭いでたいへんご迷惑をおかけした次第である。しかし、中村祥二先生の著作によると、スカトールはごくごく薄くなると他の香りを引き立てる重要な要素になるとか・・・・しかし、研修会場でこの花をお好みになる生物はハエだけであった。
(三宅 記)
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