会員:香川義熙
 
 第48回洋蘭展で「こんな花が咲きました」というランの花を写真で出展するという新企画があり、また蘭展テーマの「エッ!これもラン!?」のディスプレーとして、珍しいラン花のデジタル画像放映で多くのランの写真が紹介された。「ランには独特の美しさや形態を持っていて絵になる、写真になる。
 写真出展者をみると、16名45点中1名1点がポジフィルム、15名44点がデジタル(メール送信又はCD)による出品でした。如何にデジカメ時代に入ったかを物語るものでした。と同時にそれだけ写真画像が身近かになって(携帯電話にまで)、普及しているということでしょう。
 そこで、この欄をお借りして、初心者向き「花の撮り方」を何回かに分けて紹介したいと思います。
写真撮影には基本的な要点が幾つかあります。ピント、露出、絞り、フレーミング、・・・、花に向かって花を撮る心構えを言う先生もいらっしゃるでしょう。が前置きは止めて実務要点を実写画像でお見せしながら理解していただければと思います。
 今回は先ず「露出」の問題を取り上げてみましょう。
 
   
−1.0補正
 
0補正
 
+1.0補正
 シンビジュウムを撮った写真です。補正ゼロの標準撮影とマイナスとプラスの補正撮影の例です。出来上がりの写真をパソコン画面で大きくしてよく見ると、左は露出不足・右は露出オーバーがこの画面を見ても歴然ですが、それでは中央の補正ゼロの写真は果たしてよいのか? 本当は−1/3位が好ましい露出なのです。
 過去、銀塩写真即ちフィルム写真の時代には、ネガフィルムは露出度が正確でなくとも多少の修正はできるが、リバーサル(ポジ)フィルムはそれが効かないから、プロでも露出計などを駆使してこの露出度に神経を使った。ところがデジカメの現在は、カメラの裏面で直ちに撮った画像が見える。また撮った画像をパソコンに取り込んで、修正ソフトを使って露出度が色、コントラスト、明るさ・・・などとして修正が効く。とはいっても、撮影時に正しく撮っておくのが良い写真を作る条件には間違いありません。
 それでは、何故そうした補正が必要なことがおこるのか? カメラの「おまかせ」ポイントで撮っているのに何故カメラが間違えるのか?
 それは背景の明るさ(暗さ)が原因なのです。カメラの明るさ読み取りは画面全体(高級カメラには種々測光方式)の明るさを測光するのです。画面を大きく占める背景が暗く、被写体が明るい場合レンズは画面奥の多くの暗さを認識し、被写体の明るさにはそぐわない「画面は暗いからもっと露出を掛けろ!」とカメラに指令を出すのです。そこで被写体には露出が掛かり過ぎ、この誤差を人間が修正してやらねばなりません。全自動のおまかせカメラにも未だ人間が必要なのです。だから背景と被写体の占める面積比でこの補正比も変わってきます。練達のカメラマンでも、数枚露出の段階撮影をしておくのです。その例を次に示してみましょう。
 
   
−1.0補正
 
0補正
 
+1.0補正
 
   
 
−2.1/3補正
 
−2.0補正

 さあ、これは背景が広く被写体の小さい、バルボフィラムの写真ですが如何でしょう? 上は何れも露出オーバーですね。正しい露出は右の−2.1/3のようです。随分とアンダーな露出になりますね。
 以上は背景が暗い場合でした。逆に被写体より背景の方が明るい場合は、当然逆でプラス補正になります。その例を下に掲載します。
 左の画面は標準で補正ゼロ撮影ですが、カメラが背面の明るさに測光を合わせているので、肝心の被写体の花は暗すぎますね。適正露出は+1.0補正のようです。
 適正露出と言っても、プロの先生でも多少はアンダーめ好み、明るめ好みがあったり、被写体によって明るく表現したり、時には故意に暗くする場合もあるようです。

 
 
0 補正
 
+1.0補正
 
 「花を撮る」場合、露出で難しいのは白花です、例えば最初のシンビジュウムの写真で、補正0がよく見えるのに、「本当は−1/3位が好ましい露出なのです」と書きました。それは補正0の写真をパソコンの大きな画面でよく見ると、中央の白い花色が少し飛んでいるのです。写真には白い部分や画面の一部に光が当たって「白く輝る」ことがあります、写真用語でこれを「飛ぶ」と言います。白い花では少しのオーバー露出でもこれが目立ち、白い花弁の質感が失われるのです。注意して「見る目」を養うことも必要です。
 最初に申し上げるべきでしたが、花を撮る時はチュウリップマークの「おまかせ」でもいいが、できることなら「絞り優先」で撮ることに慣れましょう。その理由は後の項目で出てまいります。
 ラン栽培と同じで、写真も苦労してこそ結果が楽しまれます。(第1回)
 

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