Cattleya maxima
Cattleya maxima

カトレア・マキシマは、南米大陸太平洋側に分布するカトレアの代表的な種であり、大西洋側を代表するC.labiataとほぼ同時代に、古くからヨーロッパに知られていた。

歴史的には、1777年、ペルー北部の山岳地域の探検に送り込まれたスペインの植物学者であるパヴォンとルイズによって発見・報告された。
発見地域は現在のエクアドル南部の都市グワヤキルを囲む山地の一画であったと伝えられている。
分類学的な同定・命名は、発見からおよそ50年後の1831年に、リンドレイによってなされたが、その11年後の1844年、RHS(英国王室園芸協会)に送られた生株が同協会の温室で開花し、それによって再確認された。

種名のmaximaは「最も偉大なカトレア:Greatest Cattleya」という意味であり、高さ50cm以上もある株の高さから名付けられと言われている。
交配も大変古くから行われ、サンダース・リストには1859年に以下の種が登録されている。
Cattleya Dominiana
SEED PARENT: C. intermedia
POLLEN PARENT: C. maxima
REGN. DATE: 01-01-1859

交配の相手がインターメディアという、南米大陸を挟んで対角線上の地域に生育するカトレアであることが興味深い。



本種の自生地は、エクアドル沿岸地域の山地を中心に、北はコロンビア南部沿岸、南はペルー北部内陸に及んでおり、一般的にはエクアドルを代表するカトレアとして知られている。
生育環境は自生地によって差があり、株姿も多少異なる。
エクアドルでは標高600m前後に広がる内陸の常緑雲霧林の樹上に着生しており、海岸地域の乾燥地域に囲まれた地域ではさらに標高の高いところに広がる乾性林に分布している。
コロンビアでは標高500m〜1400mの比較的高い地域に広がる常緑樹林の川沿いの環境に生育している。
また、ペルーでは、エクアドルの沿岸地域の自生地に似て、標高1400mほどの山地に広がる乾性林に分布しており、最近は、アマゾン側の標高800m付近に広がる熱帯林の中でも生育が確認されている。 株姿は、リゾームが短くバルブが密集して立ち上がる傾向があり、指標的な形態は、やや扁平な幅1.5cmから2cm、高さ30cmほどの細長いバルブの先に長さ25cm以上の葉をつける(株姿の写真参照)。
このような指標的な株姿の個体は主に高地産のものであり、低地産のものは一般的に背が低く(バルブ高20cm、葉長20cm程度)、バルブも稜がなく断面が真円にちかい形状をしている。
花茎は20cm以上になり、3〜5つの花を付ける。


開花期は晩秋から早春までと長いが、我が国では初冬時期がミッドシーズンであり、自生地近辺では「クリスマス・フラワー」と呼ばれることもある。
ちなみに、この種の他にはC.percivalianaが「クリスマス・カトレア」と呼ばれている。
花は、NS13cm程度が標準であり、リップに展開する濃色の葉脈とリップ中央に走る濃い黄色の筋によって特徴づけられ、個体によってはこの濃色の葉脈がペタルのることがある。
ペタル、セパルはどの個体もほぼ全体に細めであり、フルブルームになるとセパルが軸を中心に後ろに反り返る性質がある。
この特徴が、この花の野性味を強調しており、清楚で上品な香りとともに、原種のカトレアを好む栽培家には大きな魅力となっている。
前掲のノーマルカラータイプの花以外に、アルバ、セルセア、セミアルバ、コンカラー、等のカラーバリエーションが知られているが、自生状態ではカラーバリエーションは希少であり、とりわけ、純白の花は希少である。
下の写真は、10月例会の人気投票で入賞したコンカラータイプであるが、セミアルバのシブリングの中から選別された個体である。


栽培は、乾性林から熱帯ジャングルにまで適応して分布していることでもわかるように比較的易しく、30%〜50%の遮光下の環境で、16度以上35度以下の環境で栽培する。
蒸れを嫌うので、風通し良く栽培する必要がある。
花後(冬)は乾き気味で管理するが、春の新芽の動きは早く、4月上旬には新芽が動き始める。
生長は早く、7月にはバルブが完成してしまい、その後に出た芽から2本目のバルブが完成し、1リードから2本の花茎が上がる。
そうなれば、もともと輪数が多く付く性質があるのでとても華やかである。鉢はリゾームが短く株も暴れないので小さめでよく、8本バルブで3.5号程度が目安である。
コンポストはミズゴケで栽培するが、吊り鉢で栽培すると良い。

参考文献
1.Die unifloliaten Cattleyen : J.Braem
2.The Cattleyas And Their Relatives Vol.1 : Carl l. Withner
3.Native Ecuadorian Orchids Vol.1 : Calaway H.Dodson Rodrigo Escobar
4.原種洋蘭大図鑑 : 白石茂

「自生地の写真は、須和田農園のホームページ
http://www.suwada.com/
に掲載されていますので、そちらをご覧下さい。」

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