Rhynchostylis coelestis
Rhynchostylis coelestis

Rhynchostylis coelestisは1885年にH.G.Reichenbachによって記載されたタイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの低地に自生する着生蘭である。

種小名のcoelestisは「青い」を意味するラテン語で、その花の色彩に由来する。「青い」と言う日本語から私達日本人が連想する色彩、例えば「青い空」、「青い海」と言う場合の「青い」、とは異なった、「藤色」(wisteria violet) 若しくは「藤紫色」(dark lilac)の小花多数を直立する花茎に総状に付ける。白色やピンク色の変異体も知られている。



Rhynchostylis coelestis normal



Rynchostylis coelestis var pink

少し古い話になるが、1991年6月に松坂屋銀座店において開催された蘭友会主催「夏の蘭'91」に、故人となられた小美野兼司氏が出品された10本以上の花序を持ち、蘭友会会長賞を受賞したcoelestisの大株は実に見事であった。

Rhynchostylis属は東南アジア、インド、スリランカ、インドネシア、ミャンマー、タイから中国・フィリッピンに広く分布する。
1825年に、C.L.Blumeが設立し、唐沢幸司氏のOrchid Atlas第8巻によれば、4種が含まれるとのことであるが、一般に栽培され、洋蘭展で見ることの出来るものはcoelestis, gigantea, retusaの3種である。
属名はギリシャ語rhynchos(嘴)とstylis(蕊柱)の2語からなり、タイプ種(分類の基準となった種)であるretusaの蕊柱の形が嘴状であることに由来する。



Rhynchostylis gigantean(栽培:杉本喜久雄)

3種の中でも、giganteaは'Tokai Spot'と言う個体名を持つ巨大な株が20本を越える花茎を下垂させて、「世界らん展日本大賞'97」において日本大賞を受賞し、話題となったことを覚えておられる方もあるでしょう。
gigantea(「巨大な」の意)とretusa(「微凹状の」)はAeridesとともに、その総状花序が狐狩りをする人々が手柄の記念に保存する狐の尻尾(=brush)に似ているため'Foxtail Orchid'と俗称される様に、太い下垂する総状花序を持っている。

これに対して、coelestisは直立する総状花序を有し、花序の長さもgigantea,retusaに及ばない。株の大きさもAscocentrum ampullaceumと同じ位である。開花の時期はgiganteaが主として冬、retusaが夏から秋であるのに対して、春から夏にかけてである。
                                     (記:松井紀夫)



Rhyncostylis retusa(栽培:萩原宣久)

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