Trichopilia suavis
Trichopilia suavisの花を、蘭関係の書籍や蘭業者のカタログに掲載された写真ではなく、始めて自分の眼で実物を見たのは何時だったのか、蘭友会入会後20年余り過ぎた現在となっては、はっきりとは思い出すことができない。

然し、手元にある私の温室に現存する蘭のリストを開いてみると1990年1月19日に白石洋ラン園から4,000円で購入したと記載されている。この記載を元にして、蘭友会報「蘭友」20号(1981年12月1日発行)以降40号(2000年12月1日発行)に掲載されている毎月の例会記録並びに蘭展記録を調べてみたところ、Trichopilia suavisが出品され、受賞したことが記録されているのは88年2月例会(横川武氏出品、第7位)、91年第33回洋蘭展(渡辺京子氏出品、努力賞)、95年3月例会(島崎純一氏出品、第10位)、96年2月例会(私、松井の出品、第2位)の4回のみである。

私がTrpla. suavisを購入した時期から推量すると、恐らく元会長横川武氏出品の株を見て、喉にオレンジを彩り、魅力的なローズピンクの模様が入り、豊かなフリルのある大きなリップを持つこの花の美しさに惹かれて購入したのではないかと思われます。


Trpla. suavis

96年2月例会で人気投票第2位に入賞した株は現在バルブ数19(落葉したバックバルブを含めて)、7号鉢に植えられています。しかしながら、昨年夏の暑さに負けて作落ちし、来春は良い花を望めないのではないかと思っています。

Trpla. suavisは中米コスタリカから南米コロンビアにかけて分布し、
1848年にJ. Warscewiczによってコロンビアで発見され、1850年にJohn Lindleyと
J. Paxtonによって記載された。
自生地の標高が1,500m前後であるから、栽培にあたって、夏季は風通しの良い所で、夕方置き場の周辺に散水し、出来るだけ夜温を下げるように心掛けたいものである。種小名suavisは「快い」の意(会報「蘭友」40号74頁参照)

Trichopilia属は1836年にJohn Lindleyによって設立され(Introduction to Natural History第2版446頁)、中南米に約30種が分布する。
属名はギリシャ語のtricho(=hair、毛)とpilos(=felt、フェルト)の2語からなり、葯床の縁に毛があることによる。Trichopilia属の花の最も際立った部分は大きなリップである。趣味家や植物園等で栽培され、しばしば目にする事が出来るものは次の様な種である。


Trpla. fragrans

Trpla. fragrans 西インド諸島、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、ボリビア等の標高1,200〜2,500m に自生する。1844年にJohn LindleyがPilumna属として記載したが、1858年にH.G.ReichenbachがTrichopilia属に移した。種小名は言うまでもなく「芳香のある」の意である。
Trpla. laxa ベネズエラ、コロンビア、ペルーなどの標高1,200〜1,800mに自生する。1844年にJohn LindleyがPilumna属として記載したが、1858年にH.G.ReichenbachがTrichopilia属に移した。種小名は「まばらな」の意。
Trpla. marginata グアテマラからコロンビアにかけての標高1,000〜1,500mに自生する。1849年にJ.WarscewiczがパナマのChiriqui火山の斜面で発見し、1851年にArthur Henfreyが記載した。種小名は「覆輪のある」の意。赤いリップの縁に白い覆輪があることによる。

Trpla. tortilis

Trpla.tortilis メキシコ、グアテマラ、ホンデュラス、エルサルバドル等の標高1,500mまでに自生する。George Barkerによって園芸界に紹介され、1836年にJohn Lindleyによって記載された。種小名は「捩れた」の意で、セパルとペタルが捩れている事による。
上記4種ほどポピュラーではないが、コロンビアの中高地に自生するTrpl. hennisiana も喉に黄色を彩る白色の大きなリップを有し、大変美しい。


Trpla.henisiana

                      (写真提供白石茂氏、文責松井紀夫)

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