Dendrobium a'la calte
(ゴールデンイエローの魅惑)
デンドロビウム・アラカルト

先日終了した東京ドーム・世界蘭展では、海外各国から様々な販売業者が集まる。
中でも、タイから毎年やってくるキーリー・オーキッドは、マニアックな栽培家からお土産バイヤーにまで人気があり、小形のバナナの房のようになったデンドロビウム・アグレガツム(Den.aggregatum)を取り上げて「これ、毎年買ってるのに咲かないわよ」と文句を言いながら、また今年も買ってゆく人が何人もいる。
かく言う筆者も「コレ、ハナミホン!ハナミホン。ゼッタイサクネ!」と、30cmあまりある花茎にゴールデンイエローの花がたくさん付いた開花株を見せられると、つい人混みをかき分けて乾燥バナナの塊のような株を手にしてしまう。



Den.aggregatum:コルク着け(栽培・撮影:三宅八郎)



Den.aggregatum:鉢植え(栽培・撮影:三宅八郎)

ラン科の植物には黄色の花が少ない。
そのような中で、黄色がノーマルカラーである花を付ける種が一番多いのは、どの属だろうか。
詳しく調査したわけではないが、新大陸系ではオンシジュウム、旧大陸系ではデンドロビウムではないかと、筆者は考えている。
昨年、発売されたDendrobium and Its Relatives というデンドロビウムの原種専門のテキストを見ると、21種の黄色の花を付ける種が記載されている。
これらの中で、東南アジアの地域に広く分布する種は、まるで熱帯の太陽をそのまま映したようなゴールデンイエローの花を付けるものが多い。この色は、バンコクやチェンマイの街角で見かける僧侶の着衣の色でもあり、お寺の石仏にも着せてある。



Den. densiflorum(栽培:香川義熙)

キーリー・オーキッドの販売ブースで見かけるデンドロビウムもこの類が多い。
それゆえか、周囲の販売ブースに比べて目立つのである。
世界蘭展の時季に見られるのは、Den.fimbriatum、Den.senile、Den.chrysotoxum、Den.densiflorum、Den.lindleyi(aggregatum)、等で、白の花弁にゴールデンイエローのリップの花をこの中に入れるのを許されるのならば、Den. thyrsiflorum も取り上げることができる。
senile 以外は長い花茎にたくさんの花がつくので豪華であるが、花命が1週間程度と 短いのが欠点である。
これらの種は、色が明るく艶やかであり、長い花茎にたくさんの花を付けるので、原種そのままでも十分に美しい。それ故か、これらの原種をベースにした交配種もほとんど見あたらないが、出来ることならば花命の長い個体が出てきて欲しい。



Den. fimbriatum (栽培・撮影:三宅八郎)

毎年、東京ドームでゴーデンイエローに魅せられて買い求めても、開花の恩恵にあずかれない人たちのために、ほんの少しだけ栽培の秘訣をサービスしてみよう。
とにかく、持ち帰ったら、ハリガネで板にくくりつけられている株をはずし、小さめの素焼き鉢(2.5号〜3号)にミズゴケで固めに植え付け、吊り鉢にする。
バラの花が咲き始めたら外の物干し竿に吊るして日を良く当て、ミズゴケが乾いたら水をやる。肥料は液肥を時々やる程度でほとんどいらない。



Den. senile (栽培・撮影:三宅八郎)

秋になったら柿がおいしくなる頃まで、徐々に水を減らしながら干しあげ、最低8度ぐらいの低温に2週間ほど当て、カラカラの状態で室内に取り込む(これを、デンドロ虐めと呼んでいる)。
これが東京では11月上旬から中旬頃。あとは、日当たりの良いところで、少しずつ水やりと保湿につとめ、最低温度を15度以上に保っていれば花芽が出てくる。
下垂性のデンシフローラムやシルシフローラムは、通気が悪いと花芽の先が腐ってしまうので、通気にも気をつかうこと。

これで咲いたら、また、販売ブースで次の黄色い花のデンドロに手を出し・・・・
何年かすると、栽培棚からゴールデンシャワーが・・・
                                       (記:三宅八郎)



Den. chrysotoxum (栽培・撮影:香川義熙)

ページトップへ

原種解説の花過去ページへ

トップページへ