Phalaenopsis violacea
(ファレノプシス・ヴィオラセア)
 

Phalaenopsis violaceaは、Phalaenopsisという学名に当てられた和名「胡蝶蘭」から連想する、蝶に似た形の白花を、分枝する長い花茎に沢山付けるPhal. amabilisや、ピンクの花を付ける Phal. schilllerianaのような華やかさは無いが、淡い緑色地に紅菫色を彩り、芳香を有する星型の花が数多くのラン愛好家を魅了している。



Phalaenopsis violacea(Malayan Type)

 Phal. violaceaは1859年にTeijsmanによってスマトラで発見され、彼がオランダのLeiden 植物園のWitteに株を送り、1860年にWitteが記載した。種小名のviolaceaは「菫色の」を意味する。
原産地はボルネオ、スマトラ、マレーの低地であるが、原産地によって紅菫色の入り方に相違が見られ、亡くなられた千葉雅亮氏の遺稿「胡蝶蘭の原種」ではそれぞれ「ボルネオ型」、「スマトラ型」、「マレー型」としてそれぞれの特徴が説明されている。紅菫色の全く入らない変種(v. alba)もある。




Phalaenopsis violacea(Borneo Type)

 Phalaenopsis属は約50種がインド、東南アジア、インドネシア、オーストラリア北部、フィリピン、中国に分布する。模式種はPhal. Amabilis。属名はギリシャ語のphalaina(=moth、蛾)とopsis(=appearance、外見、見かけ)から成り、いくつかの種の優雅な胡蝶を思わせるような白花を指している。 Phalaenopsis属は1825年にC. L. Blumeによって設立されたが、その後1862年にH. G. Reichenbachによって、1886年にはR. A. Rolfeによって、また最近ではH. Sweetによって改定された。Sweetの分類によれば、Phal. violaceaはPhal. lueddemanniana, Phal. pallens, Phal. sumatranaなどと共にSection Zebrinaeに分類されておりPhal. amabilis,Phal schillerianaはSection Phalaenopsisに分類されている。

 ヴィオラセアで忘れてならないのが香りである。贈答用に使われるいわゆる胡蝶蘭は、花は豪華で美しいが、残念ながら香りがない。




Phalaenopsis violacea 



Phalaenopsis violacea coerulea

Phalaenopsisの原種には香りのないものが多いが、fasciata、hieroglyphica、schilleriana、violaceaには香りがあり、いずれもローズ調あるいはスパイシーで東洋的な香りがする。
前記のようにヴィオラセアにはボルネオタイプとマレータイプ(スマトラタイプを含む)があるが、前者はローズ調、後者にはそれにシナモン系の香り(cinnamic note)が加わったスパイシーでエキゾティックな香りがする。ボルネオタイプには、ローズに柑橘系の香りを混ぜたような爽やかで優しい香りがするものもある。
栽培にあたっては、強めの斜光、高温・高湿度の環境で、適度な通風に気を遣う必要がある。
(文責 松井紀夫)

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