Eurychone rothschildiana
この花が私の温室から姿を消してから何年になるだろう。古い記録を何処かに仕舞い込んでしまったので、定かではないが、15年以上も前のことになるかもしれない。
基部に濃い赤褐色を彩るエメラルドグリーンに白い縁取りの入る大きなトランペット型のリップに魅せられて、この花の一作開花苗を入手した。しかし蘭栽培の経験も浅く、原産地に関する知識も皆無で、手探り状態での栽培ではなかなか花が見られず、開花を見たのは2〜3年後であったように思う。その後この株はある年の春、温室の内張りを例年よりも1ヶ月早く取り外したため、温室内の湿度が急激に低下し、それが原因で枯死してしまった。その後、もう一度苗を購入して、再挑戦してみたが、旨く育たず、矢張り枯死してしまった。近年、もう一度挑戦してみたいと思い、株を探してみたが、今度は株が見つからない。先日送られてきた国際園芸のカタログ?96に株が掲載されていたので、購入して、再々挑戦してみたいと考えている。

Echn. rothschildianaは最初1903年にO'brienによってGardner's Chronicle誌上において、Hon. Walter Rothschildが開花させたウガンダ産の株に基づいて、Angraecum rothschildianaとして記載された。その後、1918年にRudolf Schlecterによって新たな属Eurychoneに移された。 Eurychone属はEchn. rothschildianaとEchn. galeandraeの2種からなる小型の着生蘭である。属名はギリシャ語のeurys(broad、広い)とstylis(style、型)からなり、この種の短く、幅の広い蕊柱に言及したものである。
Echn. rothschildianaはウガンダのビクトリア湖畔近くの熱帯雨林、標高1,100〜1,200mの木陰の多い、湿度のある常緑林で生育しているのが発見される。また、赤道近くのギニア、ガーナ、象牙海岸、リベリア、ニジェリア、シエラレオーネ、ザイールなどでも発見される。花期は通常晩春から夏。上記の私の経験からもお分かりいただけると思いますが、栽培には適切な環境作りと十分な気配りが必要です。また、菌類、バクテリア等による感染に注意が必要とのこと。AOS会報Orchidsの5月号にWilliam Rhodehamel氏の関連記事が掲載されているのでご参照ください。


写真提供:白石洋ラン園
(文責 松井紀夫)

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