インドネシア滞在中、友人達とジャングルの中の滝に遊びに行きました。その道中、林床で記憶に引っ掛かる植物を見つけました。唇弁がなくランの花とは異なるのですが、特徴ある花序をしています。実物は見たことはなかったのですが、ヤクシマランの仲間に違いないと思いました。
以前、筑波実験植物園の遊川先生がランの進化の話をされた時、ランの祖先としてヤクシマラン属(Apostasia)を紹介されていたものです。その時の線画や、J.B.ComberのORCHIDS
of SUMATRA、Orchids of Javaの写真を見てApostasia odrataと同定しました。 また、その近くに背丈が大きくて葉が細く、白い花をつける株もあるのを見つけました。50cm程もあり、まるで幼木のようでした。これはApostasia
nudaと同定しました。試しに根を見たところ、強い菌根臭?がしました。
その後、屋久島を行ってヤクシマラン(Apostasia wallichii)も見ることができました。日本産は10cm未満で東南アジアの基準種よりずいぶん小型です。
ヤクシマランがランの祖先と言われる所以は、雄ずいと雌ずいが合着しずい柱を形成しつつあるところです。また、遺伝子解析でも非常に近いことが分かっています。ヤクシマランをラン科に含めるかどうかは分類学者で賛否があるようですが、ランの祖先には違いないということで進化の過程を考えてみてはいかがでしょうか。
写真・文 中山博史 |