Aerangis
(アフリカの白い妖精たち)


Aerangis ellisii(エランギス・エリシィ)

 アングレコイドの大家、フレッド・ヒラーマンが書いたA culture manual for Aerangis Orchid Growers というテキストの表紙に、尾の長い白い鳥が群れて飛び立つようなイメージの花のイラストが書かれている。この花がエランギス・エリシィという稀少な蘭であることを知ってから、自分で咲かせてみたいと思い、あちこち探し歩いてようやく入手した苗から育てた株が、この冬、7年目にして花を付けた。

 Aerangis(エランギス)は、アフリカ中・南部とマダガスカル島(コモロ諸島を含む)に生育する単茎種のランで、我が国に生育するフウラン(Neofinetia falcata)によく似た花を付ける。株姿も花の性質もよく似ており、長い花茎に、距(きょ)という蜜を貯めた長い器官を付けた白い花を複数付け、夕刻から夜間に芳香を発する。花期は種によって多様であり、秋咲き、冬咲き、初夏咲きがあり、今の時期に咲くものには、 mtstacidii、citrata、fastuosa、pumirio、punctataなどの種がある。

 アングレカムやエランギスなどのアングレコイド類は、ほとんどが白い花で、いずれも暗くなってから香りを発する。これはポリネータ(主に蛾)が夜行性であることに起因するのであるが、じつは、前述のフウランに寄ってくる虫が何者なのか、いまだよくわかっていない。これも「白くて夜香る」ということで、蛾の類がポリネータであろうかと推定されている。


シトラータ(花茎はもっと長くなる)


ファスツオーサ(ヤマユリのような香り)

 エランギスは、大きな木の幹に細い根で着生しているが、マダガスカル産のものは根が比較的太く、大柄な植物体の種が多い。例外的に、pumirio、punktataはマダガスカル産でありながらリーフスバン3cmあまりの超小型種である(花はとても美しい)。

アフリカ大陸産のエランギス(ジャスミンから甘さを抜いたような樹脂質の香りのものが多い)
 biloba(ビローバ:セネガル、カメルーン、秋咲き)
 kotschyana(コッチヤナ:ナイジェリア、エチオピア)
 luteo-alba var.rhodosticta(ルテオアルバ・ロドスティクタ:カメルーン、エチオピア)
 mystacidii(ミスタシディ:タンザニア、東アフリカ)
 somalensis(ソマレンシス:エチオピア、ソマリア)
 splendida(スプレンディダ:マラウィ、ザンビア)
 ugandensis(ウガンデンシス:ザイール、ウガンダ、ケニア)
 verdickii(ヴェルディッキィ:ザイール、中央アフリカ)

マダガスカル産のエランギス(香りに多様性がある)
 articulata(アルティクラータ:甘いバニラのような香り)
 citrata(シトラータ:レモンのような柑橘系の香り)
 cryptodon(クリプトドン:甘いバニラのような香り)
 curnowiana(カルノウィアナ:?)
 ellisii(エリシィ:樹脂質の香り)
 fastuosa(ファスツオーサ:ユリをさらに甘くしたようなすばらしい香り)
 modesta(モデスタ:バニラのような香り)
 pumirio(プミリオ:香らない)
 punctata(プンクタータ:樹脂質の香り)
 spicurata(スピクラータ:?)

 国産の単茎では、カシノキラン、カヤラン、ナゴラン、ヨウラクラン等に似ており、大きな木の幹に直接着生し下向きに生育する。エランギスをコルク付けで栽培すると、根の細いものはカシノキラン、根の太いものはナゴランによく似た株姿になっていることが多い。


カシノキランの自生状態


ナゴランの自生状態

 栽培に当たっては、高湿度と風通しに注意して管理する必要があり、温度は最低15度、夏は32度以下に保つようする必要がある。日照は50%遮光程度がよい。

 アングレカム・ハウスのF.Hillermanが、A Culture Manual For Angraecoid Orchid Growaers というテキストの中で「アングレコイドの根っこは通気がないのを極度に嫌い、老廃物が貯まるのを極度に嫌うことから、コンポストが気に入らない場合はあらゆる方向に根を伸ばし、苦し紛れに鉢から逃げ出そうとするあまり、鉢の周りは根っこのジャングルのようになる」 というようなことを書いており、エランギスを栽培するためのコツを見事に示唆している。したがって、水苔で柔らかめ植え付けてこまめに植え替えるか、コルク付けやバークに植え付け、高湿度の環境下で吊って管理するとよい。特に、根の細い小型種の場合は、極端に根に老廃物や不潔な水が滞留することを嫌うので、栽培が難しい。

 国内のラン園でのエランギスの入手は、近年、なかなか難しくなっている。筆者の取材では、須和田農園、奥田園芸、国際園芸に各種のエランギスがそろっており、種数の多いことでは須和田農園が群を抜いている。ただ、株の増殖が難しく全体に個体数が少ないので、入手にあたっては園主によく相談する必要がある。

記・写真:三宅八郎


エリシィ


ルテオ・アルバ・ロドスティクタ


ウガンデンシス


ディスティクタ


ビローバ(栽培しやすく、よく増える)


アルティクラータ


モデスタ(甘いアイスクリームのような香り)


ローレンティ


プンクタータ(株が小さく、栽培は難しい)


プミリオ


ミスタシディ


ヒルデブラディ(オレンジ色のエランギス)


ヒルデブラディの拡大(花は3mm)
                                           

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