今月の花  Ceratostylis retisquama

 現在私の手元にある株は、 86 年 6 月に、今は故人となられた大宮市(現さいたま市大宮区)の竹野幸子氏から頂いたもの。現在は、僅かに 1 本の茎に数輪の花を付けるだけの小さな株になってしまったが、嘗ては 5 号鉢の中央に立てたヘゴ棒に茎を絡ませた大株で、数多くのオレンジ色の花を付け、 95 年 10 月蘭友会の秋の大展示会において優秀賞を受賞したことのある見事なものであった。

  02 年 2 月に、匍匐茎の伸び具合から、私の得意の栽培方法、「ネット筒栽培」に適していると考え、ネット筒の上部にバークと竹炭の混合で植え込み、匍匐茎をネット筒に沿って下垂させました。これまでに「ネット筒栽培」をしてきた Bulbophyllum や Cattleya walkeriana 等と同様にうまく生育してくれるものと信じていました。

 ところが、私の期待とは逆に、次第に元気がなくなり、棒状の葉が黄色くなってポロポロ落ち始めました。翌 03 年に元の素焼き鉢・水苔植えに戻しましたが、元気を回復せず、最初に述べた哀れな姿になってしまいました。「ネット筒栽培」に切り替えた時期が悪かったのか、切り替え後の管理が悪かったのか、原因は良く分かりませんが、機会を見てもう一度「ネット筒栽培」に挑戦してみたいと思っております。

  Ceratostylis retisquama は園芸界では Ceratostylis rubura という名前でよく知られており、 Hugh Cuming によってフィリッピンで発見され、 1857 年に H. G. Reichenbach によって記載された。

  Ceratostylis 属はインドから東南アジア、太平洋の島々にかけて約 60 種が分布しており、属名はギリシャ語の keras 又は kerato(=horn) と stylis(=style) からなり、蕊柱の角状の外見に由来する。現在、蘭友会の例会などで見事な出来栄えの株を見かけるのは、小型株で春に小さな白花を咲かせる Ceratostylis philippinensis と冬咲きで C. retisquama よりやや長い葉を有する白花の Ceratostylis subulata くらいではないだろうか。

(文責:松井紀夫)

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