(白石洋ラン園提供)
     
今月の花  Ionopsis utricularioides

 Ionopsis utricularioidesを目にしたのは、私が蘭友会に入会して間もない1983年6月の見学会で、三浦メリクロンを訪れ、お土産として実生苗を頂いたのが始めてであった。その折に、当時会長であった横川武氏から、「この属は湿度の高い風を好む」というお話を伺ったことを思い起こします。その当時はIonopsis utricularioidesではなく、Ionopsis paniculataという名前のほうが一般的であった。この株はその後何年かカスミソウのような可憐な花を楽しませてくれたが、2坪の温室1棟から始めた我が家の温室が、2坪2棟へ、
更にはじめの2坪温室の上に6坪のビニール・ハウスを被せると云うふうに大きくなってゆく間に、空中湿度不足のため私の温室から姿を消していった。
 昨年、東京ドームの世界らん展日本大賞2005の蘭友会展示の飾り花として使用したIonopsis utricularioidesを2株譲り受けた。以前に会報「蘭友」で報告したことがあるプラスチックメッシュの鉢?に、バーク・竹炭2:1混合の植え込み材料で植え込んで、夏は戸外に出して50%遮光のネットの下で、扇風機の風がよく当たるところに吊るして栽培してみたところ、今年も沢山の花を付けてくれた。
 現在は温室内で、加湿器の上、扇風機の風の当たるところに吊るしている。今度は温室から姿を消すことがないように、栽培管理に気を配っていこうと考えている。
 Ionopsis属はComparettia属の近縁で、メキシコからボリビア、パラグアイにかけての熱帯、亜熱帯アメリカに10種ほどが分布している。属名はギリシャ語のion(violet)とopsis(appearance)からなり、花がビオラの原種に似ていることに触れている。
 Ionopsis utricularioidesは始め1788年にO. SwartzによってEpidendrum utricularioidesとして記載され、1821年にJohn LindleyによってIonopsis 属に移された。

(文責:松井紀夫)

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