今月の花  Ascocentrum ampullaceum


 Ascocentrum ampullaceumは葉腋から伸びる10センチに満たない花茎に、紅紫色の小花を蜜に付け、栽培も容易なので洋蘭愛好家の温室ではよく見掛ける株である。現在私の手元にある株は94年10月に白石洋ラン園で購入したもので、ラベルには4倍体との記載がある。最近は、白色のものも見掛ける。この種はNeofinetia falcata(風ラン)と交配されてAscofinetia Cherry Blossumを作り出し、これを再度Asctm.ampullaceumと交配してAscofinetia Petite Bouquetを作り出している。最近の蘭愛好者団体の月例会などでは、Asctm.ampullaceumそのものよりも大株のAscf. Cherry BlossumやAscf. Petite Bouquetを見掛けるほうが多いようである。

 Asctm.ampullaceumはヒマラヤからミャンマー、タイの標高300〜900mに自生し、1832年にN. Roxburgh博士によってAerides ampullaceumとして記載された。その後、1913年にRudolf SchlechterがAscocentrum属に移した。
 Ascocentrum属はヒマラヤから東南アジア、ジャワ、中国南部、台湾、フィリピンなどに数種が分布している。属名はギリシャ語のascos(=bag)とkentron(=spur)からなり、リップの大きな距に言及している。蘭愛好家によってよく栽培されているのはAsctm. christensonianum, Asctm. hendersonianum(=Dyakia hendersoniana), Asctm. curvifolium, Asctm. garayi(= miniatum)などであろう。
(松井記)
 

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