カトレヤ・ウィティギアナ(Cattleya wittigiana)は、1878年にソフロニティス・ウィティギアナ(Sophronitis wittigiana)として登録された。旧名で記憶している人も多いのではないか。2008年にカトレヤ属へ変更されたが同種異名が多く、ソフロニティス・プルプレア(Soph. purpurea)、ソフロニティス・ロゼア(Soph. rosea)、ソフロニティス・グランディフロラ・プルプレア(Soph. grandiflora var. purpurea)などは、すべて同じものである。
草丈、花径ともに5cm前後の小型種で、種名はドイツ人の植物コレクター、ヴィッティーグ(Wittig)にちなんだもの。原産地であるブラジル東海岸のエスピリトサント州の中部山岳地帯は、熱帯だが標高700~2000mの温暖~冷涼な気候で、湿地の苔むした樹上に生育しているという。
栽培はカトレヤに準じるが耐寒性は強く、自生地によっては氷点下になることもあるようだ。反面、暑さにはあまり強くなく、夏場の最高気温は30℃を超えない方が良い。日光は、夏場は木漏れ日程度、冬は強めにする。原産地では全くの日陰や直射光下に自生している場合もあるようだが、日陰の株の花は小さいという。潅水は、前回の潅水の湿り気が乾いてから行い、いつも湿っているのはよくない。自生地では毎晩霧がかかるようだが、日中には乾いてしまうのかもしれない。
栽培者の上野氏に話を聞くと、コルクなどに着生させる方が扱いやすく、週2回程度、潅水代わりにコルクごとバケツの水につけているとのこと。施肥や消毒も同様に薄い溶液につけて行っているそうだ。また、バックバルブの根が傷むと樹勢が弱くなるので、これを傷めないようにするのがコツで、そのためにも水は少なめが良いという。
いとも簡単そうに語られたが、このグループを大株に育て、毎年咲かせている人は少ない。バックバルブの根を大切にするという秘伝も、植え込みの中の湿り気を外観から的確に推察せよということに通じるので、上級者には簡単かもしれないが初級者にはなかなか手ごわそうだ。
栽培:上野幹雄、写真・文:古城鶴也