今回取り上げたのは、エラサンテ・ヘンリキ(Erasanthe henrici)です。1925年にエランテス属(Aeranthes henrici)として登録され、2007年に現在の属へ移されました。
マダガスカル原産の着生らんで、アングレカム属(Angraecum)、エランテス属(Aeranthes)、エランギス属(Awrangis)などに近い種類です。ただ、生育が非常に遅く、実生から開花まで10年以上かかることもあるといわれています。
葉は暗緑色で薄く、幅5~10cm、長さ20~30cmの長い楕円形をしており、左右に5~7枚ほど互生します。株元から50cmt程度の花茎を下垂させて、花径10~15cmほどの大きな花を10輪ほどつけます。セパルとペタルは緑白色で細長く、リップは明るい緑色で、先端部は白くなります。細長い距があり、夜に香るところなどは、アングレカム属などに似ています。開花期は不定期で年に2回咲くこともあるようです。
栽培温度は中温性で、適度に風通しの良い多湿の環境を好むようです。長い根を多数伸ばし、空中にも展開します。このため、鉢で栽培するのは難しく、ヘゴやコルクに着生させたり、バスケットに植える方が適しています。葉が薄く暗緑色で面積が広いという特徴から、直射日光は避け、日陰~半陽程度の場所で管理し、強風も避けた方が良さそうです。施肥は、ごく薄い液肥を潅水の代わりに与えます。
<栽培者より>
この株は、数年前に国際園芸さんから入手したものです。私の所へ来てからは、2回目の開花になります。栽培方法がよく分からないので、エランギス属と同じように管理しています。
今年は暑かったせいか葉が日焼けしてしまい、それをきっかけに葉が何枚か黄変してしまいました。みっともないので切り取ろうかと思いましたが、自然に落ちるのを待つことにしました。枯れるのではないかと心配する人もいますが、根がしっかり張っていますし、芯葉が元気ですから、また持ち直してくれると期待しています。ただ、とても生育が遅いようで、全部新しい葉に生え代わるには何年もかかりそうです。
文・写真:古城鶴也 栽培者:笠原隆義