現在私の手元にあるLycaste brevispathaの株は93年12月に、当時蘭友会蘭展委員長をしておられた小林晃氏から、植替えの際のバックバルブを頂戴したものです。
その当時、私はLycasteの原種を集めることに凝って、関東の夏の暑さに弱く、栽培が難しいと定評のあるLyc. skinneriを除く様々なLycaste原種を買い求めていました。
93年から96年までの4年間にbrevispatha以外にciliate, fimbriata, leucantha ,longipetalla,
macrophylla, shilleriana, locasta, reichenheimii(=longiscapa),
denninngiana, macrobulbon, luminosa, campbellii, costata, trifoliataの14種を入手しました。
その中にはcampbellii, macrobulbon,macrophyllaのように順調に生育して毎年沢山の花を咲かせてくれるものもありますが、その一方でlocasta
,trifoliataのように3年ほどで姿を消していったものもあります。
Lycaste brevispatha
Lycaste brevispathaはLycasteの中では小型で、バルブの長さは4〜6?、直径4?ほどで、薄い緑色地に淡い薔薇色の斑点の入るセパルと白地に薔薇色のぼかしが入ったペタル、薔薇色を帯びた紫色の斑点の入ったリップを持つ直径約5cmの花を花茎の先端に1輪咲かせます。1バルブに6輪位まで付けるようです。
原産地はコスタリカ、ニカラグア、パナマ。自生地の標高は600〜1,500mですから、山上げや冷房温室など特別な配慮はしなくても、戸外に出して風通し良く栽培すれば関東の夏の暑さにも耐えることが出来ます。
秋口から水を減らして乾かし気味にし、11月中頃まで戸外において、バルブに良く日を当てて、低温に会わせれば、2月頃可憐な花を沢山咲かせてくれます。
Alex D. HawkesのEncyclopaedia of Cultivated OrchidsではLycaste candidaがSynonymとして挙げられていますが、Dr.
Henry F. OakeleyのLycaste Species, The Essential Guideでは別種として扱われています。両種はリップの形が異なっているように思われます。
Lycaste属はメキシコからペルー、ボリビアにかけての中南米の海抜0mから2500mに分布しています。
その種の数はDr. Henry F. OakeleyのLycaste Species, The Essential Guideによれば45種と12亜種、6自然交雑種が含まれるとの事。
属名は古代ギリシャの詩人ホメロスのIliadの中に登場するトロイの最後の王Triamの美しい姫Lycasteに由来しています。
この属の大部分の種ははじめMaxillaria属に分類されており、1790年代にRuizとPavonに率いられたスペインのペルー探検隊によって始めてヨーロッパに紹介された多くの種が1840〜1870年の間にLycaste
skinneriにその名を残しているGeorge Ure Skinnerによって紹介された。
1843年にJohn Lindleyが新たにLycaste属を設立した。 (文責 松井紀夫)
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