紹介する花はBulbophyllum ericssoniiである。
2022年8月お盆のころ、棚下のバルボが気になっていたのだ。ちょいと向きを変えてみたところ、なんと花茎が伸びて先端に花のつぼみが付いているのに気が付いた。な、なんと花だ!花が付いてる、と。いや驚いたが、驚くにもわけがある。なかなか咲きにくいと言われている種であるからなのだ。咲きにくいとわかっていて購入したのだが5年作っても咲かないというのもいいかげん嫌気がさしてくるものなのだ。アタマのかたすみに誰かにあげちゃおうかとか、処分しようかなどチラチラと点滅しだしたのだ。そんな矢先だから喜びもひとしおなのだ。
滅多に咲かないのなら咲くまで見届けてやろうか、と。鉢もきれいに洗い、とび出したバルブを始末したり、傷んだ水苔は補修したりしてお化粧を施してあげました。それが23日。
26日になるとツボミに黄色が濃くなり長いセパルがシャキッとするなど変化が出始める。
27日になると8輪の花が対角線上に平べったく配置されクワガタのハサミのように見えるのだ。シンメトリーな美しさとでもいうのだろうか。
28日朝 起きてみると、なんと咲いているではないか。花の対角線上の長さつまり直径は24センチあり、大きくて妖しい美しさにすっかり魅了されてしまった。それにしても開花が始
まるととどまることなく一気にフィニッシュを迎える姿は見事としか言いようがない。三日間十分に楽しませていただいた。
この花について
記録はないのだが、5,6年前H洋蘭園から求めた株である。上で書いたようになかなか手ごわく咲きにくい種のようだ。
自生地は
マレーシアからニューギニアにかけて700m~1400mの樹木に着生するが、自生地の画像を見ると明らかに堆積した落ち葉、腐葉土からツボミを立ち上げている株も見受けられる。自生地の温度は7~35℃、湿度は高い。開花させるためには6℃~8℃の低温に当てる必要があるとの記事も見られる。このあたりに栽培上のヒントがあるのかもしれない。
シノニム
Bulbophyllum virescens J.J. Sm. 1900
Bulbophyllum binnendijkii J.J.Sm. 1905
写真と文:佐藤 攻