今は亡き松井紀夫氏が温室終いのため例会株市においてたくさんの株を提供された。私も何かいただいてみようかとの思いがあって形見分けのような気持ちでこの株を選んでみたのであった。それまでカタセタムなど作ったことなど無かったのだが何事も経験と考えて入手した。
翌年開花したのが上の写真である。季節外れということもあるのだろうが貧弱な花が2輪付いて咲いてくれた。我が温室と相性が良いのか株の生育は順調に経過するようにみえるものの3年間花を見ることは叶わなかった。思い切って素焼き鉢に水苔から、プラスチック鉢に水苔に変えてみたところ見たこともないグリーンの花が咲いた。2021年のことである。翌2022年も同じグリーンの花が咲いてしまい、ガッカリした覚えがある。例会出品時に、清水会長からアドバイスをいただき、バックバルブを2個外してみたのだが、これが良かったようで2023年7月には2花茎16輪の花を付けてくれた。例会に出品することはできなかったがホームページで披露させていただくこととした。
艶のあるワインレッドの深い色合いがなんと豪華なことか、と、ソワソワして数日間を過ごすことができたし、実に贅沢な時間であった。しかし、花の命は短いのだ。開花4日目から萼片が傷みだし、花に触れば花粉が小さな弓矢のごとく飛ぶし、花弁の輝きも失われてしまうまでアッという間であった。まるで噓のような時間だった。
PS
「こんな花が咲きました」の過去記事に金子徹郎氏「~夫婦花咲く~」の解説もあるのでそちらもぜひ参考にしていただきたい。
orchidjaos.gr.jp/contents/flowers/f0307-2.html
2023年7月19日
撮影と文:佐藤 攻