今月紹介するのは、ブラトニア・オルメック(Bratonia Olmec)です。ブラトニア属は、ブラシア属(Brassia)とミルトニア属(Miltonia)の属間交配で、以前はミルタシア属(Miltassia)と呼ばれていました。しかし、ミルトニア属がミルトニア属とミルトニオプシス属に(Miltoniopsis)分かれた際、ミルタシアではどちらの系統か分からないという不便が生じました。そこで、ミルトニアの流れをくむ系統はブラトニアに、ミルトニオプシスの系統はブラソプシス属(Brassopsis)という呼び名に変えられたようです。ちなみに、RHSの検索サイトSearch The International Orchid Register(https://apps.rhs.org.uk/horticulturaldatabase/orchidregister/orchidregister.asp)では、ブラトニア属は86種が登録されていますが、ブラソプシス属は1種しかありません(2025/8/19調べ)。
さて、本題のオルメックは、ブラシア・レックス(Brassia Rex) × ミルトニア・ミナス・ジェライス(Miltonia Minas Gerais)という交配で、1975年に登録されました。花の形や斑点はブラシア・レックスに、花の色彩や輪数などはミルトニア・ミナス・ジェライスに似たのでしょう。上の写真は「サチ」という個体で、白地に紫色の斑点という色彩のコントラストが美しい花です。
下の写真は2025年の蘭友会らん展に出品されたブラシア・レックスで、花に斑点のない特別な個体です。オルメックも株を大きく育てると、レックスのように花数をたくさんつけるようになるのでしょうか。
同じミルトニア・ミナス・ジェライスを用いた交配に、アズテック(Bratonia Aztec)があります(下写真)。アズテックはブラシア・ベルコーサ(Brassia verrcosa) × ミルトニア・ミナス・ジェライスという交配で、1976年の登録です。ブラシア・ベルコーサは、ブラシア・レックスの片親ですから、両者はよく似た交配といえるでしょう。サチの兄弟株にはアズテックに良く似た花もありそうです。
アズテックの花色は、ミナス・ジェライスの片親のアン・ウォーン(Miltonia Anne Warne)が紫色の花だからでしょう。アン・ウォーンの片親は、登録ではスペクタビリス(Miltonia spectabilis)となっていますが、スペクタビリスは薄桃色の花です。一方、スペクタビリスによく似た花形で紫色の花をつけるモレリアナ(Miltonia moreliana)は、昔、スペクタビリスの変種とされていた時期があります。オルメックやアズテックの色彩は、もしかしたらモレリアナに由来しているのかもしれません。
<栽培者から>
Bratonia(Miltassia) Olmec ‛Sachi‘は、例会のときに出店していただいたK Botanicalから購入しました。ミルトニアとの交配なのに、うちでも育ちますので暑さには強いと思います。私は、50%ほど遮光した環境で育てており、夏場は暑いので午前中と夕方に動力噴霧器で葉水を与え、夜8時前後に水撒きをしています。年間を通して朝夕に動力噴霧器で葉水を与えるのが日課で、冬場は1日おき程度に水撒きをしています。私の栽培温室は5階の屋上にあり、日差しが朝から夕方まで当たる乾燥しやすい環境なので、普通の人よりも水やりが多いかもしれません。(編者注:耐暑性は、ミルトニオプシス属は弱く、ミルトニア属は比較的強い傾向です)
Bratonia Olmec:栽培・鈴木隆夫、撮影・古城鶴也、2025年8月例会入賞花
Brassia Rex:栽培・野中定彦、撮影・古城鶴也、2025年第64回蘭友会らん展出品花
Bratonia Aztec:栽培・鈴木隆夫、撮影・冨澤 實、2019年10月例会入賞花
Miltonia moreliana:栽培・中村好一、撮影・佐藤 攻、2018年9月例会入賞花
記事:古城鶴也