Laelia(レリア)属はカトレヤ属の近縁で、メキシコ以南から中米にかけて24種が存在します。また、カトレヤが4個の花粉塊を持つのに対し、レリアは8個の花粉塊を持ちます。
魚の胴体から尾の形をしたメキシコ領土の最も細い場所はテワンテペック地峡と呼ばれ両端の太平洋とメキシコ湾との距離が約200kmです。かつて、パナマ運河が計画された時にその候補地の一つとなりました。メキシコのLaelia属にとってこの地峡は生息の境となっていて、多くの種はこの地峡の北側に生息しています。地峡の両側に生息しているのはL.anceps, L.rubescens, L.superbiensの3種だけです。
メキシコのLaeliaは標高2,000m以上の高地に自生する種が多く、一般に乾燥と寒さに強いと言われています。しかし、L.anceps, L.crawshayana, L.rubescens, L.aureaは暖かい気温を好みます。
Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839
メキシコ固有種です。シナロア州からオアハカ州、一部ベラクルス州の標高1,400~2,300mのオーク林に着生しています。比較的小ぶりですが形が整った花です。生息地の北部に自生しているものは白色が多く、オアハカ州等南部のものはピンク系の花が出ています。花期は秋から冬です。
Laelia anceps(レリア アンセプス)Lindl 1835
メキシコ 及び、グアテマラ、ホンジュラスに生息しています。メキシコではタマウリパス、サンルイス、イダルゴ、ケレタロ、プエブラ、ベラクルス、オアハカ、チアパスの各州の標高900~1,500mのオーク林に着生しています。
メキシコのLaeliaの中では、ancepsは花の色彩が多様なものが多く、諸外国のラン栽培者の間で交配親として好まれています。白花のalbaに加え、オアハカ州の南部で発見された亜種のLaelia anceps subsp.dawsoniiがあり、更に、dawsoniiの変種としてゲレロ州チラパ市周辺で見つかったLaelia anceps subsp.dawsonii chilapensisが知られています。
Laelia aurea(レリア アウレア)A.V.Navarro 1990
メキシコ固有種です。20世紀中ごろまではL.rubescensの変種と考えられていましたが、L.aureaはセパル、ペタル、リップが黄色でペタルの幅がより広く、リップの舟弁が持ち上がっています。メキシコのナヤリ、ドゥランゴ、シナロア州の標高100~300mに自生しています。花期は秋です。
Laelia autumnalis(レリア オートムナリス)Lindl 1831
メキシコ固有種です。北西部のナヤリ州から南部のゲレロ州にかけて標高1,500~2,600mのオーク林、崖の岩などに着生しています。かつては、首都圏(標高約2,300m)の公園などの樹木にも着生していました。現地の冬の寒さや乾燥に比較的強い種です。秋から冬にかけて開花します。L.autumnalisはセパル、ペタルの一部が勝手に前後に反り返ります。この姿を見て、若い踊り子が踊っているようだと表現した写真家がいました。
スペインに征服される以前から中央部の住民は11月1、2日の死者の日にL.autumnalisの切り花を祭壇に飾ったり、バルブをスライスして粉にしたものを糊のかわりにして、砂糖や小麦粉などと混ぜて祭りで使う菓子を作っていました。
Laelia × crawshayana(レリア クロウシャヤナ)Rchb. F. 1880
メキシコの固有種です。ハリスコ州の標高1,000~1,600mに自生しています。
L.albidaとL.ancepsとの自然交雑種と考えられています。類似するLaeliaが秋から冬にかけて開花するのに対し、L. ×crawshayanaは春に開花します。
Laelia furfuracea(レリア フルフラセア)Lindl 1839
メキシコ固有種です。メキシコのオアハカ州の標高2,100~3,000mの高地に自生します。メキシコのランの中では最も標高の高い場所に生息する種の一つです。寒さに強く、花もちも良い種です。
Laelia gouldiana(レリア ゴールディアナ) Rchb. F. 1888
メキシコの固有種です。自生地はイダルゴ州の標高1,200-1,900mの地域です。長年、自然界では発見されていませんから、既に絶滅していると考えられています。しかし、幸いなことに人工的に栽培され個体数も増えていることで今でも同じ花を見ることができるのです。
1888年に欧州にこの個体が持ち込まれた時に、Heinrich Gustav Reichenbachがこの個体をL.autumnalisとL.ancepsの交雑種と推定し、Laelia x gouldianaとして登録しました。しかし、その後、この交雑を証明するためにL. autumnalisとL.ancepsの異なった個体を度々交雑させましたが、L.gouldianaと思われる個体は生まれませんでした。1938年にイダルゴ州のMetztitlan(メチティトラン)村の谷間にあることが分かり調査されましたが、村人達が家の周囲で育てているだけで、周囲の山林では全く個体を発見できなかったのです。
この種の特徴は、同種の花粉ではタネのカプセルを作れないことです。他種のLaeliaの花粉なら受粉します。そのため、現在栽培者の間で見られるL.gouldianaは同じ親から派出したものと考えられます。
現在、KEWではLaelia x gouldianaと自然交雑種として登録されていますがメキシコ国立自治大学や米国のAOSでは独立した種としてLaelia gouldianaと表示されています。将来、DNA塩基配列データ等での科学的な解析がなされるのを期待しています。
Laelia rubescens (レリア ルベッセンス)Lindl 1840
メキシコ 及び、中米諸国の標高1,700mまでの落葉樹の森に自生します。
メキシコではナヤリ州からチアパス州まで広く分布しています。
Laelia superbiens(レリア スーパービエンズ)Lindl 1840
メキシコからニカラグアにかけて分布します。メキシコでは標高1,000~1,500mの比較的風通しの良い樹木に群生し着生しています。大型種でバルブの長さは40cmほどになります。 花期は秋から冬にかけてalbaも知られています。
オアハカ州ではL.ancepsとの自然交配種、L.halbingerianaが見つかっています。
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