Japan Amateurs Orchids Society

2023年1月メキシコの野生蘭

Epidendrum(エピデンドラム)Lindl.1763

 約1,500種を有する大きな属です。米国のフロリダから南米アルゼンチンの北部に至る広域に分布する主として着生ランですが、地生ランも存在します。笹に似た細長い茎を持つタイプ(長茎種)とバルブを持った短茎タイプ(短茎種)に大きく分けられます。命名当時は着生するランであれば詳しく分析することなくEpidendrumの属に加えていたと言われますが、その後、Barkeria, Encyclia, Oestlundia等、別の属に再分類されてきました。属内の種は特徴が似たものを集めグループが形成されています。近年、Epidendrum属の多くの種は交配親としても利用されています。現在、メキシコには117種前後のEpidendrum属のランが自生していますが、その内の代表的な種を取り上げます。


********

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum anisatum(エピデンドラム アニサタム)  La Llave & Lex. 1825
 メキシコ固有種。ナヤリ、ハリスコ、ミチョアカン、ゲレロ、メキシコ、モレロスの各州、標高1,550m~2,300mのオーク林に着生しています。バルブは持たず笹の様な細い茎に互生に葉を付け茎の先端から花茎が伸びます。冬から春にかけて開花する花は2cm位のサイズで花茎の先に10輪程咲きアニスのような香りを出します。自生地が高地であるため、栽培するには涼しい場所が必要です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum atroscriptum (エピデンドラム アトロスクリプタム) Hágsater 1993
 メキシコのベラクルス、オアハカ、チアパス州の標高200~900mの雨林に自生します。笹の様な細い茎に互生の葉がつき、茎の先端に房状に花が咲きます。春から夏にかけて開花する強健種です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum ciliare (エピデンドラム シリアレ)  L.1759
 メキシコからカリブ諸島、南米のブラジルまで標高500~1,000mの広い範囲に分布しています。バルブは円筒状に細くその先端に1枚、稀に2枚の葉を付けます。カトレヤの葉に似ています。花は冬から春にかけて開花します。このランの特徴は白色のリップの両側にでるレースのような細かい切れ込みです。また、強健種ですから栽培は比較的容易です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum diffusum (エピデンドラム デイフサム) Sw. 1788
 メキシコから中米、カリブ諸島に分布しています。バルブは持たず、笹の様な細い茎の先が枝分かれして沢山な花芽を付けます。花は1cm程の大きさでリップは白みをおびてセパル、ペタルは茶褐色ですから、離れて見ると蚊が群れているように見えます。現地ではモスキート(蚊)と呼ばれています。強健種です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum eustirum (エピデンドラム エウステイルム) Ames, F.T.Hubb. & C.Schweinf. 1935
 メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアに分布し、360~1,700mまでの森林に自生しています。2cm前後の花が笹の様に細い茎の先から出る花茎に散形花序に咲きます。花全体は薄い緑色をしていてリップの中央部分が赤紫色になります。秋から春先にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum eximium (エピデンドラム エキシミウム) L.O.Williams 1941
 メキシコ、グアテマラ、エルサルバドールに分布し、メキシコではプエブラ、オアハカ、チャパス州の標高2,300~2,800mの濃霧林に自生します。花弁とリップが花の中心で結束していてリップはラッパのように開いています。涼しい場所を好み夏から秋にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum flexuosum (フレクソスム)  G.Mey. 1818
 メキシコからブラジルにかけて中南米の標高1,000mまでの比較的低地に自生しています。花は赤みがかったピンク色で長く伸びたリップが花の中央で起立しているのが特徴です。自然界では蟻と共生している場合が多いです。 花期は一定せずに年間を通じて花をつけます。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum galeottianum (エピデンドラム ガレオティアヌム) A. Rich. & Galeotti 1845
 メキシコから中米のニカラグアに至る地域の標高2,100mまでの樹木に着生しています。メキシコではベラクルス、オアハカ、タバスコ、カンペチェ、チアパスの各州に自生しています。ペタルとセパルは緑色がかった茶色で花の大きさは1.5cm程ですが、花茎の先に20輪前後集まって鞠の様に丸くなって咲くのが印象的です。花期は春から夏にかけてです。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum gasteriferum (エピデンドラム ガステリフェルム) Scheeren 1974
 メキシコのオアハカ州の固有種で、標高2,000~2,400mに自生しています。冬から春にかけて咲く花は2cm前後でずい柱の先端が赤色をおびているのが特徴です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum gonzalez-tamayoi (エピデンドラム ゴンザレスタマヨイ) Hágsater 1993
 メキシコ固有種。ナヤリ、ハリスコ、ゲレロ、オアハカ州の太平洋側のスロープ、標高700~1,100mのスロープに自生します。小型種で多肉質の葉を持つ茎の先端に2輪の花をつけます。花期は秋です。
 Kewの資料では、Epidendrum gonzalez-tamayoiはEpidendrum schlechterianumのsynonymと表示されていますが、メキシコのラン研究者、Eric Hagsaterは両者の相違点を挙げています。即ち、Epidendrum schlechterianumの花は紫がかった同一色でセパルがより長い。自生地はパナマでありEpidendrum gonzalez-tamayoi のメキシコ固有種とは別の種である。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum greenwoodii (エピデンドラム グリーンウディ) Hágsater 1987
 メキシコから中米のエルサルバドールにかけて、標高1,780~2,500mに自生します。笹の様な葉と茎の先端から花茎が出て秋から春にかけて開花します。夜間に甘い香りを出します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum guerrerense (エピデンドラム ゲレレンセ) Hágsater & Garcia-Cruz 1993
 メキシコ固有種。ゲレロ州の標高1,800~1,900mのオーク林に着生しています。秋から初冬にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum hagsateri (エピデンドラム ハグサテリ) Christenson 1995
 メキシコ固有種。ゲレロ、オアハカ州の標高1,900~2,550mの樹木の枝に着生し、細長い円錐形のバルブの先端に花茎が出て下方に垂れて花が咲きます。花は星形にペタル、セパルが広がり春から夏にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidndrum incomptum (エピデンドラム インコㇺプトム) Rchb.f. 1853
 メキシコから南米のコロンビアに至る地域に分布し、標高900〜1,600mに自生します。花は夏から冬にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum laucheanum (エピデンドラム ラゥチェアヌム) Bonhof ex Rolfe 1893
 メキシコから中米諸国、コロンビアに至る地域に分布し、標高800~2,100mに自生します。 笹の様に細い茎、葉は笹の葉より長く、茎の先端から花茎が長く下に垂れ、写真の様に2cmほどの花が多数つきます。 花は茶色でリップは緑色です。夏に開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum longipetalum (エピデンドラム ロンギペタルム) A.Rich & Galeotti 1845
 メキシコ固有種。サンルイスポトシ、ハリスコ、プエブラ、ベラクルス州の標高1,700~2,200mの多湿なオーク林に自生しています。左右の側弁が細く5cm程にのびて下に垂れます。花期は春です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum marmoratum (エピデンドラム マルモラトゥム) A.Rich. & Galeotti 1845
 メキシコ固有種。ハリスコ、ゲレロ、オアハカ州の太平洋側スロープ、標高1,500~1,700mのオーク林に着生しています。バルブは10-20cmの長さの棒状で先端に2-3枚の葉をつけます。葉の間から花茎が伸びて数輪の花をつけます。直径2cmほどの花は全体がベージュ色の縁取りがあり、赤褐色の筋模様が全面にほどこされ特徴のある花です。花期は春です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum martinezii (エピデンドラム マルティネシ) L.Sanchez & Carnevali 2001
 メキシコからグアテマラ、ベリーズに至る標高50~1,000mの常緑樹林に自生しています。メキシコではタバスコ、チアパス、ユカタン州に分布しています。夏から秋にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum matudae (エピデンドラム マトゥダエ) L.O.Williams 1968
 メキシコ固有種。ハリスコ、ミチョアカン、モレロス、プエブラ州など中央部から南西部にかけて標高1,700~2,300mの山林に自生します。春から秋にかけて開花します。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendum melistagum (エピデンドラム メリスタガム) Hágsater 1988
 拙著、写真集「メキシコの野生ラン」でEpidendrum difformeを写真と共に紹介しましたが、Epidendrum difformeはカリブ諸島に自生する種でありメキシコには生息していませんでした。私の誤りでした。写真集に掲載した写真はEpidendrum melistagumです、改めて訂正いたします。 Epidendrum melistagumは最近になって(1988)Epidendrum difformeから再分類された新しい種です。メキシコの東南部チアパス州からグアテマラ、エルサルバドール、ホンジュラスにかけて分布しています。花茎の先に散形花序に咲く3cm前後の花は同時に開花し肉厚で全体がレモン色をしています。花期は夏から秋にかけてです。 エピデンドラムは多くの種が集まった属ですから属の中で幾つかのグループが作られています。Epidendrum melistagumは「DIFFORME グループ」の一つで3cm前後の肉厚で薄緑色の花を咲かせEpidendrum difformeと大変よく似ています。このグループには数十にものぼる多くの種があり、皆よく似た花です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum miserum (エピデンドラム ミセルム) Lindl.1841
 メキシコ固有種。ハリスコ、ミチョアカン、モレロス、オアハカ州の標高1,300~2,000mに自生します。 密集して生える直径3cm程の球形のバルブは頂点に伸びた2~3枚の披針形の葉を落とすとその跡に花芽を出します。花は灰色の1cm前後の大きさで秋から冬にかけて開花します。 全体が小型で花とバルブの色が似ているので目立たない種です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum nocturnum (エピデンドラム ノクトゥルナム) Jacquin 1760
 米国のフロリダからカリブ諸島、中南米の標高100~1,980mに広く分布しています。開花は夏から秋にかけてですが、その他の季節に開花することもあります。一度咲き終わった花の脇から翌年新たな花芽が出てきます。夜に心地よい香りを出します。自家受粉するので蜂などの仲介は必要とせず、時には花が開かないままタネが出来ることがあります。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum porpax (エピデンドラム ポルパックス) Rchb.f.1855
 メキシコから南米のベネズエラ、コロンビアにかけて分布します。標高400~1,800mの樹木や岩に絨毯の様に広がって自生しています。
 春から夏にかけて開花します。Epidendrum peperomiaとよく似ていますが、花の細部の違いの他に自生地の分布が違います。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum radicans (エピデンドラム ラディカンス) Pavon & Lindl. 1831
 メキシコからベネズエラ、コロンビアにかけて標高900~2,500mに自生します。主として地生ランですが、時折、樹木等に着生していることもあります。秋から春にかけて開花します。花は笹の様な細い茎の先端で咲きますが、途中の節の部分から根が出ることもあります。強健種です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum raniferum (エピデンドラム ラニフェルム) Lindl. 1831
 メキシコからコスタリカまでの標高50m付近に自生します。笹状の茎と葉を持ち、茎の先端から房状の花が咲きます。開花は秋で強健種です。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum rosilloi (エピデンドラム ロシジョイ) Hágsater 1988
 メキシコの固有種。ハリスコ州の標高1,500~2,000mに自生します。花は春から夏にかけて開花し、同じ花柄から数年にわたり花が出てきます。

Laelia albida(レリア アルビダ)Bateman ex Lindl 1839

Epidendrum stamfordianum (エピデンドラム スタンフォルディアヌム) Bateman 1838
 メキシコからコロンビアにかけて標高20~800mに自生します。紡錘状のバルブの先端に数枚の葉をつけその間から花芽が伸びます。春から秋にかけて開花します。

不許複製・無断転載禁止

メキシコの野生蘭メニューページへ
トップページへ