写真・解説文:齋藤 清
米国のフロリダ南部からメキシコ、南米のアルゼンチンに至る広い範囲に分布する着生ランです。現在、Kewは90種のランがTrichocentrum属の中に属すると認めています。多くの種はOncidium属から再分類されたものです。 バルブは小さく硬く肉厚な葉が一枚頂生します。リップに距があるのが特徴です。
Trichocentrum ascendens(トリコセントゥラム アスッセンデンス)(Lindl.) M.W.Chase & N.H.William 2001
メキシコから中米諸国に分布し、標高300 – 1,500mの樹木に着生しています。肉厚の葉が内側に丸く巻き込み一本の棒のようになります。花茎は葉の根元から出て花は春に開花します。
下の写真はメキシコ州マリナルコ市の標高1,500mの林の中で撮影したものです。
Trichocentrum carthagenense(トリコセントゥラム カルタへネンセ)(Jacq.) M.W. Chase & N.H. William 2001
メキシコからカリブ諸島、中米諸国、南米のブラジルにかけて広域に分布しています。標高1,500mまでの樹木に着生していて、春から夏にかけて開花します。
下段の写真は、ベラクルス州にあるEl Tajin(エルタヒン)遺跡の近くの川沿いの木立に着生しているTrichocentrum carthagenenseです。El Tajin遺跡については末尾で簡単に説明します。
Trichocentrum cavendishianum(トリコセントゥラム カベンディシアヌム)(Bateman) M.W.Chase & N.H.Williams 2001
Torichocentrum pachiphyllumはSynonymです。メキシコからホンジュラスにかけて分布して標高2,800mまでの林に自生しています。冬から春にかけて開花します。
Trichocentrum chrysops(トリコセントゥラム クリソプス)(Rchb.f.) Soto Arenas & R. Jimenez 2002
メキシコの固有種です。ゲレロ、オアハカ両州の標高1,900 – 2,100mの山林に着生しています。開花は秋から冬にかけてです。
Trichocentrum lindenii(トリコセントゥラム リンデニィ)(Brongn.) M.W.Chase & N.H.Williams 2001
メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズの標高300m付近の川沿いの林に着生しています。春に開花する花は2 – 3か月花もちします。
Trichocentrum luridum(トリコセントゥラム ルリドゥム)(Lindl.) M.W.Chase & N.H.Williams 2001
メキシコ、グアテマラ、ベリーズから南米のコロンビアに至る標高1,400mまでの山林に着生しています。春から秋にかけて開花します。
Trichocentrum microchilum(トリコセントゥラム ミクロキルム)(Bateman ex Lindl.) M.W.Chase & N.H.Williams 2001
メキシコ、グアテマラの標高2,300mまでの山林に自生しています。
開花は夏です。
Trichocentrum stramineum(トリコセントゥラム ストラミネゥム)(Bateman ex Lindl.) M.W.Chase & N.H.Williams 2001
メキシコのベラクルス州の固有種です。 標高600 – 1,000mのオーク林に自生する小型種です。
El Tajin(エルタヒン)の遺跡
El Tajin遺跡は、西暦600 – 1,200年に建設され繁栄したトトナカ族の宗教拠点です。この遺跡はメキシコの東南部ベラクルス地方の都市Papantla(パパントゥラ)の近郊にあります。(パパントゥラ市はメキシコのバニラの生産、集荷地として有名です。)
このピラミッドは他の遺跡では見られない特殊な形状をしていて、四面に作られた窓(壁龕)の数は365あり、太陽暦を基にした宗教的な意味合いがあると考えられています。
下段の写真は、遺跡の管理事務所の人達が周囲の山林から採集したTrichocentrum carttagenenseを遺跡の入り口の樹木に着生させたものです。
(注)近年の研究では、El Tajinの遺跡を建設したのはワステカ族ではないかとの説が出ています。
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