Japan Amateurs Orchids Society

2024年8月メキシコの野生蘭

Lycaste(リカステ)属 Lindl. 1843

写真・解説文:齋藤 清

 メキシコから南米のペルーに至る広域に分布し、標高400‐2,400mの山林に自生しています。着生種と地生種(岩肌に付く場合を含め)があり、KEWは36種がこの属に含まれると認定しています。多くの種でバルブは薄い卵形をしていて、葉脈が縦に伸びた広披針型の葉を2‐3枚つけます。Lycaste属は冬に休眠します。多くの種は休眠前に葉が落葉しますが、一部の種では休眠期でも葉を維持しているものがあります。 また、落葉後にバルブの葉が落ちた頂部に棘が残る種が多いのですが、なかには、この棘を持たない種もあります。


Lycaste aromatica(リカステ アロマティカ)(Graham) Lindl.1843

Lycaste aromatica(リカステ アロマティカ)(Graham) Lindl.1843
 メキシコからニカラグアに至る中米に広く分布していて、標高1,500‐2,000mにあるオーク林に自生しています。メキシコでは、ベラクルス、オアハカ、チアパス州で見ることが出来ます。
 卵形をしたバルブの根元から数本の花茎が伸びてそれぞれの花茎の先端に一つの花がつきます。開花は春から夏にかけ、花が咲いた後から出てくる披針形の葉は季節が終わるころに落葉します。学名のaromaticaは「香りがある」という意味で、シナモンのような強い香りがあります。
 強健種で日本でも広く普及している中米のランです。

 Lycaste consobrina(リカステ コンソブリナ)Rchb.f. 1852

Lycaste consobrina(リカステ コンソブリナ)Rchb.f. 1852
 メキシコからニカラグアまでの中米に分布していて、標高200‐1,000mの山林に自生しています。メキシコではサンルイスポトシ、プエブラ、ベラクルス、チアパス州で見ることが出来ます。花の咲き具合や葉のつき方はLyc.aromaticaと類似しています。花の香はレモンに似た香りです。

Lycaste cruenta(リカステ クルエンタ)(Lindl.) Lindl. 1843

Lycaste cruenta(リカステ クルエンタ)(Lindl.) Lindl. 1843
 メキシコ、グアテマラ、エルサルバドール、コスタリカに分布し、標高1,800‐2,200mの森林に自生しています。自生地は標高が高く、涼しい場所を好みます。春咲きでシナモンのような香りを出します。

Lycaste deppei(リカステ デッペイ)(G.Lodd. ex Lindl.) Lindl. 1843

Lycaste deppei(リカステ デッペイ)(G.Lodd. ex Lindl.) Lindl. 1843
 メキシコから中米、南米北部まで分布し、標高1,100‐1,700mの森林に自生しています。メキシコではタマウリパス、サンルイスポトシ、プエブラ、ベラクルス、オアハカ、チアパス州で見られます。通常、セパルの色はグリーン地に茶褐色の斑点があり、その模様は個体により異なります。なかには、茶褐色の斑点がない個体もあります。ぺタルは白色でリップは黄色に茶褐色の斑点があります。花茎は上に向かって直立に伸びる傾向がありますから、大きな株にすると沢山の花が揃って咲き見栄えがします。 基本的に春咲きですが、それ以外の季節にも咲くことがあります。

Lycaste dowiana(リカステ ドウィアナ)Endres ex Rchb.f. 1874

Lycaste dowiana(リカステ ドウィアナ)Endres ex Rchb.f. 1874
 メキシコではチアパス地方に自生していましたが、1998年の山火事で自生地が焼けて絶滅したと考えられています。現在はニカラグア、コスタリカ等中米諸国の標高700‐1,400mに自生しています。
 花茎が短く花は小型ですが、セパルの茶色とペタルの白のバランスがよく美しいランです。

Lycaste lasioglossa(リカステ ラシオグロッサ)Rchb.f. 1872

Lycaste lasioglossa(リカステ ラシオグロッサ)Rchb.f. 1872
 メキシコ、グアテマラ、エルサルバドール、ホンジュラスの標高1,400‐1,800mの山林に自生しています。冬から春にかけて開花する花は茶色のセパルと白から黄色のぺタルを持つ個体が多いです。
 花には香りはありません。リカステ属の多くに葉が落ちた後のバルブの頂点に棘がありますが、Lyc. lasioglossaにはこの棘がありません。

Lycaste skinneri(リカステ スキネリ)lindl. 1843

Lycaste skinneri(リカステ スキネリ)lindl. 1843
 Lyc.virginalisとも呼ばれています。メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドールの標高1,200‐1,800mの森林に自生しています。メキシコではグアテマラに隣接するチアパス州に自生していますが、やはり主な自生地はグアテマラです。セパルの色は白からピンクまであり、花全体が白いアルバも存在します。グアテマラではこのアルバ種はMonja blanca(白い修道女)と呼ばれ、1934年に国花に指定されました。

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