Japan Amateurs Orchids Society

2019年2月原種紹介

Bulbophyllum medusae (Lindl.) Rchb. 1861

Bulbophyllum medusae (Lindl.) Rchb. 1861 Bulbophyllum medusae (Lindl.) Rchb. 1861

 このモジャモジャとした白髪頭を振り乱したような花は、蘭の花の範疇からは大きく外れた形状をしているが、バルボフィラム・メデューサ(メドゥーサ)というれっきとしたラン科の植物の花である。白髪のようなものはセパルの先が長く伸びた部位で、これを辿って花の本体をよく見るとピンク色の斑点が付いたセパルの中に数ミリのペタルとリップが隠れるように付いている。このような形態の花であることから、ギリシャ神話に出てくる髪の毛が毒蛇の束になってしまった怪物女神・メデューサの種名を頂いているが、海外では大変人気のある蘭であり、1981年のマイアミ蘭展で550個もの花を付けた株が90ポイントの評価でCCM/AOSの賞を取っている。
 バルボフィラムには1本の花軸に複数の花がつき、コスモスの花のように円弧を描いて咲くグループがあるが(かってシルホペタラムと呼ばれていた)、この蘭はその仲間とされていたことがある。あまりに不思議な形態であったので、開花直後に花を分解してみたことがあるのだが、そのときは14個の花が不揃いの束になっていて、白髪の本数を数えたら律儀なことに、ちゃんと42本そろっていた。長さは10cm~13cmもあり、蕾が割れてから3日ほどかけてストレートに伸びきり、それをもって開花となる。匂いはほとんど感じない。
 このバルボフィラムは、タイ南部のマレー半島、ボルネオ島、スマトラ島など東南アジア熱帯域の低標高域(0m~400m)にある樹林帯に分布しており、川の上に張り出した樹木の枝や川岸の岩場に着生している。したがって、栽培は高温・高湿度の環境が必要で、風通しの良い半日陰のような環境(lightly shaded condition)を好む。栽培経験では、木漏れ日が少し当たるような比較的明るい環境の方が生育が良く、花期は晩秋から冬である。発見が1842年と古く、きわめて特異な形態の花であるにもかかわらず、授粉のメカニズムやポリネーターについては明らかにされていない。
 葉は幅3cm、長さ20cmほどでゴワゴワとして厚みがあり、直射日光が長時間当たると黄色く葉焼けしやすい。バルブは、直径1.5cm~2cm、高さ3cmほどのらっきょう型で、リゾームの間隔が3cm~5cmと長く、株が広がりがちである。鉢植えにすると5号鉢を3年で飛び出してしまうので、コルクやへご板に貼り付けるか、水苔を詰めたプラ籠で吊り栽培をすると大株に作ることができ、花の観賞性も良くなる。

(記・参考文献:三宅八郎)



参考文献
Bulbophyllums and Their Allies
Orchid Genera in Thailand “Bulbophyllum”
Orchid Names and Their Meanings
A to Z South East Asian Orchid Species
山渓カラー名鑑 蘭



撮影・HP作成:佐藤 攻



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