Japan Amateurs Orchids Society

2019年5月原種紹介

Bulbophyllum phalaenopsis J.J.Sm.1937

Bulbophyllum phalaenopsis J.J.Sm.1937

  令和最初の蘭展となった第59回蘭友会らん展inサンシャインシティの企画展示「残念なラン」の人気投票で名誉ある?1位に選ばれたのがこの種である。「残念なラン」とは、蘭展の審査で選ばれた整形花に比べ、形状・色・サイズ・臭い・生き様などが著しくかけ離れたレベルの種をまとめたグループであることから、Bulbophyllum phalaenopsisがいかに異形の種であるかはおわかりいただけると思う。
 この蘭はパプアニューギニア産の着生ランで、図鑑をいろいろ調べても自生地の状況や生態については全く情報がない。とにかくでかい!!写真のように、直径10cm近いサイズの丸いバルブに、幅15cm・長さ1.2mの分厚い葉が1枚付き、その付け根に白髪の生えた赤紫色の花が10個ぐらい付く。花は整形花のような形態に開花することはなく、5cmほどのサイズなのに半開きにしかならないが、そこからは、強烈な腐肉の臭いを発する。
 Fragrant Orchidsという蘭の香りの専門書によると、”Stinkers(臭いヤツ)”というグループに分けられており、「開花したら温室に置くことも部屋に置くこともできないので、寒冷地での栽培は難しい。花の写真をとるときは望遠レンズを使用するとよい……」と書かれている。なんともひどい言われようであるが、実際そのような臭いがするので否定もできない。
 「残念なラン」の企画展示でも、多くの来場者の方々が「たくあんの腐った臭い!!」とか「ウゲッ」という言葉を残され、それらの方々から名誉ある残念度1位に選ばれたのであった。当然のことながら、ポリネーター(授粉媒介者)は花の大きさの割にはハエである。ちなみに、そのような蘭であるにもかかわらず、高価な蘭であることでも有名で、アメリカの蘭の資料によると、2005年時点で1株・10,000ドルで売られていたという記録がある。
参考資料
Fragrant Orchids : Steven A.Frowine
Bulbophyllums and Their Allies : Emiy S.Siegerist


栽培:大場蘭園 記:三宅八郎 撮影:佐藤 攻



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