エランギス・プンクタータは、1986年にジョイス・スチュワートによって登録された、比較的新しい原種です。同種異名はありません。しばしばアングレカム・カーノウィアナム(Angraecum curnowianum)と間違われることがあるようですが、草姿で見分けることができます。種名の「punctatum」は、ラテン語で「点在する」「点のある」という意味で、根に由来するとの説もありますが、どの特徴を指しているのか良く分かりません。
マダガスカルの原産で、標高900~1500m程度の低山~高山の湿潤な森林に着生しているとのことです。葉は長さ2~3cm、幅1.5cmほどの楕円形で平開し、左右に互生します。暗緑色~灰緑色でしばしば赤みを帯び、針でついたような細かい斑点が多数入ります。花やラベルがなければ、胡蝶蘭の小苗と見間違えそうです。
春から夏にかけて葉腋から短い花茎を生じて1~2輪を咲かせます。花径は4cmほどと、草姿に比べて大きな花が目立ちます。リップは白ですが、セパルとペタルはオフホワイトで、緑、黄、橙、桃などの色を帯びます。また、距(きょ:リップの後方から垂れ下がる細長い管状のもの)が非常に長いのも特徴です。
栽培温度は中温性ですが、多湿を好むので、テラリウムでの栽培が適しているという人もいます。かなり明るい環境を好むようで、直射光は避けるものの20,000ルックス程度(夏場、建物の陰ではあるものの青空を遮るものがない場所相当)の明るさが良いという意見もあります。この光量をテラリウムで確保するのは難しいかもしれません。
水やりは、雨季に相当する春から初秋にかけてはたっぷり与えますが、乾季に相当する冬場は霧吹き程度にとどめます。ただし、冬場でも完全には乾かさないようにします。施肥は、春から夏にかけて、液肥を所定の2~4倍程度に薄めたものを潅水代わりに与えます。通常はコルクや小枝などに着生させますが、夏場の水分を切らさないように、バスケットや吊り鉢に水苔で植える方法もあります。また、着生させたものをテラリウム以外で管理する場合には、夏場の潅水を毎日2~3回行う方が良いようです。
<栽培者からのコメント>
この株は、テラリウム向きのランを探していたところ、2021年の世界らん展で薦められて求めたものです。購入時はエランギス・カーノウィアナ(Aerangis curnowiana)というラベルが付いていたのですが、調べたところ標記の名前が正しいようです。
テラリウム初心者なので、水槽にいらなくなった軽石を敷いて苔や水草を少し入れ、いくつか小さなランを育てています。水やりは、朝1回霧吹きをする程度です。置き場所は、いつも過ごす部屋の北側の出窓ですが、光量が少し足りないかもしれないので、日中はタイマーで時間を決めてLED照明も当てています。テラリウム栽培は、いつでも見られるので、ランたちの調子が分かって便利ですね。
栽培・写真:唐木善孝 文:古城鶴也
参考
World Checklist of Selected Plant Families (Kew.org) : Aerangis punctata
http://wcsp.science.kew.org/furtherInformation.do?name_id=3871
Internet Orchid Species Photo Encyclopedia : Aerangis punctata
http://www.orchidspecies.com/aerangispunctata.htm
Travaldo’s Blog : Aerangis punctata
https://travaldo.blogspot.com/2018/01/aerangis-punctata-care-and-culture.html
Plant and Archeology : Aerangis punctata
https://plant-archeology.blogspot.com/2021/02/aerangis-punctata-care-and-culture.html