Japan Amateurs Orchids Society

2022年6月原種紹介

Acanthophippium pictum Fukuy., Bot. Mag. (Tokyo) 49: 666 (1935).

Acanthophippium pictum Fukuy., Bot. Mag. (Tokyo) 49: 666 (1935).

 アカントフィッピウム・ピクトゥム(Acanthophippium pictum)は、国立科学博物館や地球規模生物多様性情報機構(GBIF)では、アカンテフィッピウム・ピクトゥム(Acanthephippium pictum)とされていますが、Kew Scienceでは標記の綴りとなっています。古い書物を調べるとアカンテフィッピウムとなっており、近年になって綴りが変わったのかもしれません。ここではKew Scienceに従うことにします。本種には、エンレイショウキランという和名がついており、漢字では「延齢鐘馗蘭」と書くようです。不老長寿の薬になるといった、言い伝えでもあったのでしょうか。
 本種は、日本の南西諸島から台湾、東南アジアにかけての広い地域の林床に自生する地生蘭です。草丈は40~60cm。草姿はエビネ属(Calanthe)やガンゼキラン属(Phaius)に似て、基部に5~8cmの短いバルブがあり、長さ20~50cm、幅5~10cmの細長い楕円形でやや光沢のある葉を2~3枚つけます。春~夏頃、バルブの基部から高さ10~15cmの花茎を直立させて、花径5cmほどの肉厚で壺型の花を3~5輪つけます。花色は黄褐色地に暗色の絣模様、弁先は濃い色になります。写真の個体は、やや色が鮮やかで濃いタイプです。
 栽培は熱帯性のエビネ属やガンゼキラン属に準じます。冬季の温度は10℃以下にはならないようにします。日照は、夏場は75%遮光、冬場でも50%程度遮光します。川沿いの林下に生えていることが多いようなので、成長期には水を切らさないようにします。冬季でもあまり乾燥させない方が良いかもしれません。施肥は成長期の春には鉢に固形肥料を置き、春と秋には薄い液肥も与えますが、冬と夏には与えません。植え込み材料は、軽石とバークを主体としたミックスコンポストが向いています。なお、頻繁な植え替えを嫌うという意見もあるので、留意が必要かもしれません。

<栽培者から>
 この株は、1年ほど前に北軽ガーデンさんから購入したものです。園主のTwitterを見ると、この株はフィリピン由来のもののようです。栽培環境は温室内の棚下ですが、明るい環境で冬場は温かく、1年中風通しの良いところで育てています。周りにはバルボフィラムが置いてあります。私の温室にはカトレヤ類が多いので、水遣りや施肥など、基本的にカトレアと同じ管理です。特別扱いはしていませんが、水は少し多めにやっています。

2022年6月21日

栽培:鈴木隆夫 写真・文:古城鶴也

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