Japan Amateurs Orchids Society

2025年8月原種紹介

Cattleya longipes var. lucasiana (Rolfe) K.A.Roberts

First published in Orchids (West Palm Beach) 85(10, Suppl.): 49 (2016)

Cattleya longipes var. lucasiana (Rolfe) K.A.Roberts
Cattleya longipes var. lucasiana (Rolfe) K.A.Roberts


今月紹介するのはカトレヤ・ロンギペス・ルカシアナ(Cattleya longipes var. lucasiana)です。鉢についていたラベルには、カトレヤ・ルカシアナ(Cattleya lucasiana)とありましたが、Kew 王立植物園のPlants of the World Online(https://powo.science.kew.org/)で検索すると、該当する種は見当たりませんでした。そこで旧称のレリア・ルカシアナ(Laelia lucasiana)で検索すると上記の名前が見つかりました。どうやら、本種はレリア属がカトレヤ属に統合される前に、レリア・ロンギペス(Laelia longipes)の変種という扱いになり、レリア・ロンギペス・ルカシアナ(Laelia longipes var. lucasiana)としてカトレヤ属に変更されたということのようです。
 本種は草姿から想像がつくように、典型的なロックレリアの1種です。ロックレリアとは岩場に生えるレリアという意味で、皆、太く短いバルブに肉厚の葉をつけ、長い花茎の先に星形の花を数輪つけるという、ずんぐりとした草姿が共通しています。基本種名のロンギペスは「脚の長い」という意味で、花茎が長いことを指しているようです。一方、ルカシアナという変種名は「ルーカス」という人名にちなんだものです。
 原産地は、ブラジルの南東部のミナスジェライス州の周辺とされ、標高1300~2000mの亜高山から高山帯に岩生しているといわれています。生育地から想像すると、暑い時期の日中はかなり高温になる可能性がありますが、標高が高いので夜間は冷涼で寒暖差の大きい環境だと思われます。また、岩の割れ目に根を張っているので、根圏(根を張っている範囲)の温度は低めで安定しており、極端に乾燥することは少なそうです。一方、寒い時期は空気が乾燥し、気温が10℃を下回ることもありそうです。
 栽培はカトレヤに準じますが、夏は少し暑がる可能性があります。また、根痛みしやすいので、できるだけ小さい鉢に植えるのが良いとされています。開花期は、ブラジルでも日本でも、夏から秋が多いようです。草姿が徒長せず、バルブは太く短く、葉は肉厚になるのは、直射光にさらされているからだと考えられます。ロックレリアを日本で栽培すると、草姿が細長くなることが多いのですが、これは日本の日射しが原産地よりも弱いからかもしれません。

<栽培者から>
 この株は、我が家へ来てから2、3年になります。他のカトレヤと同じ様に栽培しており、この株だけ何か特別の扱いをしているということはありません。山上げなどの避暑はしていませんが、なるべく陽光に当てるようにはしています。私のところでは、毎年良く咲いてくれています。(編者注:栽培者がお住いの水戸市は、東京よりだいぶ涼しいようです)


栽培:里見武志 写真・文:古城鶴也

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